【失敗談】 羽根の自由落下

羽根と本を使った自由落下の講義実験を見たことがありませんか?この実験は、「羽根を本の上に載せて手を離すと、羽根と本が同時に落下する」という、シンプルな実験です。この実験の後に、「羽根に加わる空気抵抗は本があるために無視できるので、物体が重力加速度で自由落下するときの速度は、物体の質量によらない」と、教員が説明するまでが一つの型になっています。

一見した所、これはもっともらしい説明のように聞こえますが、実は見落としている点があります。本が落下する際に、本と羽根の間の気圧が低下するため、羽根が吸引される効果が生まれます。自由落下しているように見えた羽根は、実は吸引効果によって加速されていたのです。この事実は、本を手で重力加速度より大きな加速度で引き下げると、羽根がさらに加速して本とともに落ちることから確かめることができます。もし羽根が自由落下するならば、急速に落下する本について行けず、遅れるはずです。

この講義実験は、著名な講義実験の本にも紹介されている有名な実験ですが、実は誤った説明を与えていることがわかっています。しかし、それに気づかずに授業で使ってしまう教員もいるようです(私もそのうちの一人でした)。新しい講義実験を授業に導入する際には、授業の前に一度同僚にその講義実験を見せてコメントをもらうことが大切であると痛感しました。(安田)

最終更新日時: 2014年 05月 12日(Monday) 06:09