単極ローラー
ネオジム磁石と銅板を使って、乾電池を自走させる。
【キーワード】
磁場中の電流に働く力
【目的】
磁場中の電流に働く力の向きを理解させる。
【用意するもの】
材料 | 個数 | 備考 |
ネオジム磁石 | 2つ | 直径1.5cm程度の円筒形のもので、円筒の縦軸方向に磁化されていること。単三乾電池の直径よりも大きく、同程度の大きさ。 |
銅板 | 1枚 | 100×200mm程度。アルミホイルでも可。抵抗が小さく、磁石につかない素材であればよい。 |
単三乾電池 | 1つ |
【実験時間】
5分
【実験準備】
実験をする机が、水平に設置されており、磁石につかないことを確認しておく。
【実験手順】
- 乾電池の両極に、ネオジム磁石の極がともに内向き(または外向き)になるように取り付ける。この時点では、取り付けた向きを学生に言わないでおく。
- 銅板の上に磁石を取り付けた乾電池を置く。すると、乾電池は自走する(図1)。
- 机が傾いていないことを示すため、今度は逆向きに自走させる。
- 乾電池が自走するためには、磁石の極をどちら向きに取り付けなくてはならないか、と学生に質問する。
- 考える時間を与えた上で、学生たちに挙手で意見を聞く。
- 教員から解答を説明する。
- 実験器具を学生に回覧させ、確認させる。
図1.乾電池、磁石、と銅板を机面に垂直な方向から眺めた図。図示した磁極の場合、紙面上方向にローラーは進む。 |
図2.図1の場合の、電流、磁場、電流に加わる力の向き。 |
【教員による説明】
図2のような図を用いて、電流、磁場、電流に加わる力の向きを説明する。銅板を流れる電流は広がって流れている。図2で示した銅板上のある点を考えると、その点の磁場は電流の向きに垂直な成分()をもつ。この磁場により、電流は紙面に垂直手前方向に力を受ける。この力の反作用として、磁場(磁石)は紙面に垂直奥方向に力を受ける。もう一方の磁場(磁石)も、同様の理由で紙面に垂直奥方向に力を受ける。これらの力による回転軸方向の力のモーメントを考えると、乾電池は紙面上方向に自走する。
【注意点・備考】
- 乾電池は磁石を取り付けたまま銅板の上に放置すると、放電して高温になる。乾電池が破裂する危険性があるので、実験後は直ちに銅板から取り外すこと。
- 単極モーターの「単極」とは、電流の流れるときに電極の向きが同一であること、すなわち回路が直流回路であることを表す。
- ネオジム磁石の磁力は非常に強力なため、キャッシュカードやプリペイドカードなどに近づけると利用できなくなるので注意する。
【参考文献】
[1] N. Sugimoto and H. Kawada, “The homopolar motor and its evolution,”? Phys. Teach. 44, 313 (2006).
[2] H. K. Wong, “Motional Mechanisms of Homopolar Motors & Rollers,” Phys. Teach. 47, pp.465-463 (2009).
【記事作成者】
安田 淳一郎(名城大学理工学部)
最終更新日時: 2014年 05月 9日(Friday) 09:14