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- 実施の秘訣
実施の秘訣
「学生は講義実験を一度見ただけでは、何も習得することができない」ということは、これまでに多くの物理教育研究者らの研究によって結論づけられてきました[1]。たとえ、講義実験の器具が優れた特性を備えていたとしても、それをどのように授業で実施するかによって学生への教育効果は変わってくるのです。ここでは、実験前・実験中・実験後に分けて、講義実験の「実施の秘訣」を紹介します。
1.実験前
□ 実験の設定を確実に伝える
□ 実験の注目すべきポイントを提示する
□ 結果を学生に予想させる
- 予想を学生から集め、いくつかの選択肢としてまとめる
- 学生が正誤のみにとらわれないように配慮する
- 学生の予想分布を集計し、共有する
- 予想を理由とともに記録させる
□ グループで結果予想について議論させる
- 議論の際に、予想を変更することを認める
- 議論の後に、学生の予想分布を再度集計し、共有する
- 議論の後に、予想を理由とともに再度記録させる
2.実験中
□ 学生に実験の補助を頼む
□ 実験を複数回行って、学生に現象をよく確認させる
□ 現象を把握できたかどうか、学生に尋ねる
3.実験後
□ どのような現象が起きたかを学生に説明させる(教員が実験結果を説明すると、結果の解釈を一方的に与えてしまうことになる)
□ どうしてその結果が得られたか、物理的解釈をグループで議論させる
□ 定性的な解釈を述べたのちに、定量的に計算してみせる
□ 実験結果とシミュレーション結果を照合させる
□ 実験内容に関連・類似した身近な現象について解説する
□ 思考実験をさせて、実験結果の解釈を論理的に補強する
[1] 例えば、”Namely, students will fail to learn from an event when exposed to it only once.”(Majerch, 2008, p.13)など。