水飲み鳥
玩具の動作から、熱機関の動作原理を理解する。
【キーワード】
熱機関*
【目的】
熱機関の動作原理、つまり、熱の移動と機械的仕事の関係を理解させる。
【用意するもの】
材料 | 個数 | 備考 |
水飲み鳥 | 2体 | 市販品のもの |
サーモカメラ | 1台 | 1本の乾湿計、または2本のガラス寒暖計でも可 |
白熱電球 | 1つ |
【実験時間】
10分
【実験準備】
実験の5分前に一方の鳥の頭を水で濡らし、蒸発によって頭部と胴体部の間に一定の温度差を生じさせておく。また、乾湿計の一方を水で濡らし、湿度に応じた温度差を生じさせておく。他方の鳥は渇いたまま、胴体部分にだけ白熱電球を当てて、少しだけ加熱しておく。
【実験手順】【教員による説明】
- コップの水を置いて、水飲み鳥を動作させる。液体の流動を観察させ、液体が頭部に上がる機構を考察させる。
- コップの水を取り去って、水飲み鳥を動作させる。水飲み鳥の頭部が濡れていれば、動作することを述べる。
- 水飲み鳥の濡れた部分の温度と気温では、どちらが高いかを考えさせる。
- 水飲み鳥の濡れた部分の温度が、気温よりも低いことを、サーモカメラを用いて確認する(図1)。
- 白熱電球を用いて、水飲み鳥の胴体部分を加熱する(図2)。水飲み鳥の頭部が濡れていなくとも、胴体部分を加熱すれば、動作することを示す。
- 一連の実験の結果から考えて、鳥が動作するための条件を考えさせる。次に、「動作するためには、頭部の温度が胴体部より、相対的に低温になることが必要」という結論を述べる。
- 水飲み鳥は一見、永久機関のように見えるが、エネルギー保存則と矛盾しない理由を考えさせる。
図1.水飲み鳥とその熱画像。頭の温度は15.1℃、体と空気の温度は19.0℃。 | |
図2.白熱電球による胴体の加熱 | 図3.日光による胴体の加熱 |
【注意点・備考】
- 電球で水飲み鳥を加熱する場合には、鳥の胴体部分にだけ白熱電球の光を当て、加熱する。このとき、加熱し過ぎないよう注意する。室温プラス10℃以内、または、最高でも30℃以内が適当である。また、100 W電球は危険なので避けること。有害で蒸気圧の高い流体が使用されているため、その圧力が上がりすぎるとガラスが破裂する危険がある。
- 太陽熱を利用して鳥を加熱する場合は、胴体部分を黒色の紙などで覆い、さらに鏡で集光する加熱の効率が高くなる。しかし、ガラスの破裂を避けるため、鳥全体の温度を上げ過ぎないよう、充分に注意すること。夏の直射日光ではガラスが破裂する危険があるので、避けること。
- 水飲み鳥の頭と胴体と温度差は、頭部を湿らせた場合では4?5度、胴体を加熱させた場合では10度もあれば充分である。
- 水飲み鳥の胴体を加熱させた場合では、鳥の頭部が乾いているために、水飲み鳥の胴体を湿らせた場合よりも頭が軽くなる。そこで、器具の支点を下方に移動させ、鳥のバランスを調整すること。また、鳥の頭部が下がり過ぎて、逆立ちしてしまうこともある。空コップなどを前に置いて、頭のストッパーにすると良い。
- サーモカメラが無い場合は、乾湿計、または2本のガラス寒暖計を用意し、一方の寒暖計の液溜部分を水にぬれた小さな布で覆い、気温より低下することを確認する(図4)。
- 室温が低い場合や、湿度が高いときには水の蒸発が少ないため、頭と胴体の温度差が小さくなり、鳥の動作は遅くなる(図4)。
図4.湿度と(乾球温度 ? 湿球温度)の関係 (理科年表より)
【関連トピックス】
「エアコンの室外機」
玩具の「水飲み鳥」だけでなく、ガソリン・エンジンや蒸気機関も温度差により機械的仕事をしている。その逆の機構で、機械的仕事により温度差を作れば、冷暖房に利用できる。図5はヒート・ポンプ型エアコンの室外機である。熱画像から、暖房運転では外気より熱を吸収するため気温より低温になっている。冷房運転では、逆に室外機は気温よりも高温になり、大気に熱を捨てていることが分かる。
図5.エアコンの室外機とその熱画像。左の室外機(冷房)は22.3℃、右の室外機(暖房)は-3.7℃、外気温は3.7℃。 |
【記事作成者】
三浦 裕一(名古屋大学理学研究科)
最終更新日時: 2014年 05月 12日(Monday) 03:07